明るい花嫁

3/5
1067人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ
「あら、トルコキキョウ、可愛いわね」 試着が終わり、佳音の出してくれた紅茶を口に含みながら、幸世がホッと一息つく。そのテーブルに活けられたその花に視線を落として、指先で花弁をつついた。 「もう一つのこれは、…花?」 「それは、ビバーナムっていう花です」 「ふうん、淡い緑で小さなアジサイみたい。これも綺麗ね」 佳音は相づちを打つように、ただ頷いた。 それは、2週間ほど前、もらった花束の中にあった花。毎日、水を換え切戻しをして、何とか今まで持たせてきた花たちだった。 でもそれが、和寿が持ってきてくれた物だとは、佳音はどうしても言い出せなかった。 あの時の出来事は、幸世には言ってはいけない――。そんな思いに駆られた。 「…あの、今日は古川さんはご一緒ではないんですか?」 和寿に思いが及ぶと、佳音の口を衝いて、その質問が飛び出してきた。よく思い返して見ると、和寿にはきちんと花束のお礼も言っていなかった。 「ああ、あの人は、今日はゴルフに行くんですって。って言っても、うちのパパと接待ゴルフだけどね」 幸世がケロリとした表情で、肩をすくめる。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!