二人きりの夕食

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草丈が伸びきって花が小さくなってしまったパンジーの鉢に、新しい花苗を植える。 トレニアにインパチェンスに、ペチュニア、ゼラニウム。それに夏らしく爽やかなアメリカンブルー。 こうやって時折、花の苗を植え替えると季節が変わっていっているのがよく分かる。 ヒラヒラとして優しい花弁は、前に和寿が言っていたように、佳音が作るウェディングドレスのようだ。ずっとパターンとにらめっこしていた今日のような日は、こうやって花を見るととても心が癒された。 「…………」 心は癒されているはずなのに、今日はやっぱり落ち着かない。その原因は、今も工房のキッチンで料理をしてくれている和寿の存在に他ならなかった。 どうして、和寿はこんなことまでしてくれるのだろう…? 世間の人々とうまく関わり合いを持てない、変わり者のこんな自分に…。 新しく知り合った「友人」が、物珍しいだけだろうか。 仕事に追われる忙しい日常から逃れて、ただ息抜きがしたいだけだろうか…。 そんなことを考えていると、おのずと佳音のスコップを持つ手は止まって、ほんの数鉢植え替えるだけなのに、なかなか作業ははかどらない。 植え替えとセッティング、掃除などすべての作業が終わったのは、中にいる和寿から声をかけられたのとほぼ同時だった。
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