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さすがに瑠里も意表を突かれたようだ。ま、いきなり笑い出したんだからそうだよね。
「いや、かわいいなって思ってさ。」
わざわざそのためだけにこんな時間にそんな格好をしているのかと思うと、そう思わずにはいられなかった。
すると瑠里は耳まで真っ赤になって、
「な、なにいって…かわいいとか…」
としどろもどろに言っている。僕にとって妹がかわいいのはいつものことなのであまり言葉には出さないせいか、動揺しているようだ。その姿がすごく愛くるしくて、僕は彼女を抱きしめ、頭をなでた。
「はいはい、わかったから。」
「うにゃっ…」
僕がそうすると、彼女は猫が踏まれたかのような謎の声を上げた後、言葉にならない小さな声を発し続ける。僕がそれを続けていると、先ほどよりも顔を赤くして
「に、兄さんのばかっ!」
といって、僕を引きはがし、足早に部屋から出ようとする。もう寝てしまうのかな?
「お休み。最近は涼しいから、体をひやさないようにな。」
「…わかってる。お休み、兄さん。」
瑠璃はそういうと、扉を閉めた。
僕の部屋にくると、いつもこうだ。頑張って大人になろうとしている妹を見ることほど楽しいことはない。…最近は変な方向に走っているけど。
そう考えながら僕は、妹のくれた袋を開けて、中に入っている手作りクッキーだと思われる少々形の崩れた菓子を眺める。不恰好だが、一生懸命作ったかと思うと、なんだかうれしくなる。
僕はそれを一口かじり、今度一緒に菓子を作ったほうがいいかな、なんて考えた。
…僕以外に、この菓子と思しき物体の被害に逢う人がいないことを、切に願いながら。
…砂糖入れないと、こんな味になるんだな。
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