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ハロウィン…それは、死者の霊が家族のもとを訪ねてくるといわれている日だ。人々は魔女や悪霊から身を守るため仮装し、魔よけの炎をたく。…といっても、無宗教で妖怪の類を信じていない僕には関係ないけれど。
僕はPCをしていて見つけたハロウィン関係の記事を読み終わり、シャットダウンしつつ時計を見る。今は十月三十日、午前十一時五十五分。もうすぐハロウィンだ。僕は画面を見つめ続けて疲れた目を瞑り、肩をぽきぽきと音を立ててまわした。
…その時、不意に背後に冷やりとしたものを感じた。なんだか、嫌な予感がして、僕は動きを止めた。その後すぐ、キィ…という扉を開ける音が、静かな部屋に響く。そして、僕のほうに向かって、低い声で、楽しそうに語りかけるのだ。
「トリック オア トリート…。」
僕は意を決して、その声の主を見た。そこにいたのは、
「不気味な笑みを浮かべた、若い色気のないまj」
「誰が色気のない魔女だ!」
そういって、魔女の格好をした少女は、光の速さで僕の胸ぐらをつかんだ。く、苦しい…。僕は彼女の腕をつかみ、引きはがそうとするが、びくともしない。この華奢な腕のどこにそんな力が隠されているのだろうか?
「いけない、つい本音が…。」
僕がそういうと、腕の力がさらに強くなる。
「本音って何…?」
そういった彼女の表情は、まるで般若のようだった。とても妹が血のつながった兄にしている行動だなんて思えない。
ヤバい、意識がもうろうとしてきたんだけど。手加減どころか、本気で殺す気なんじゃないだろうか?
「う、嘘です! ごめんなさい…だから、はなして…!」
僕が息ができずに喘ぐようにそういうと、瑠里(るり)はゆっくりと手を離した。し、死ぬかと思った。
すると瑠里はふくれっ面で、
「まったく…兄さんはもうちょっと乙女心を知るべきだよ。」
といった。…瑠璃はもうちょっと人を思いやる気持ちを知ったほうがいいとお兄ちゃんは思うよ。うん。
僕は深呼吸をして息を整えてから、瑠里に尋ねた。
「こんな時間に来るなんて珍しいね。どうしたの?」
瑠里はたまに部屋に遊びにくるけれど、僕が基本的に日付が変わる前に寝るのを知っているのでこんな時間にきたりはしない。
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