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俺は、クリスマスが大嫌いだ。町は明るいイルミネーションに彩られ、人々は楽しそうに騒ぎ立てる。何がそんなにめでたいのだろうか。キリスト教徒でもないくせに。
俺は誕生日が大嫌いだ。皆親から誕生日プレゼントをもらって、友達に祝ってもらえる。でも、俺はそうじゃないから。
俺は、一年で一番十二月二十五日が嫌いだ。だって…嫌いな行事が二つもあるからだ。
* *
「だから、今日は俺にとって最悪な日なんだよ。」
「うん、それ毎年聞いてる。」
俺がそうやって自分の境遇を嘆くと、うるさいとでも言いたげに勇鶴(ゆづる)は顔をしかめた。
「愚痴ぐらい聞いてくれたっていいだろ? 俺と同じ立場だったラ絶対こうなるって!」
俺はそういって、勇鶴の両肩に手を置く。誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを同じものとして扱われるし、ケーキだって一つだし…。嘆きだしたらきりがないレベルだと思う。
「なるわけないだろ。」
そんな俺とは裏腹に、勇鶴は冷ややかな目で俺の手を払いのけた。「んなこと言うなよー。」
毎回こういう態度をとるから慣れてはいるけれど、やっぱり悲しい。そろそろデレのないツンデレは卒業するべきだと思う。
勇鶴は、はぁ、とため息をつき、
「言う。毎年毎年付き合わされている身にもなれ。どうせ今年も一緒に過ごしたいってことだろう? 遠回りなことせずはっきり言ったらどうだ、面倒くさい。」
といった。なんだ、わかってるじゃないか。
「流石勇鶴は鋭いな。というわけで、俺とクリスマスをすごさn」
「過ごさない。」
「何ではっきり言わせたんだよ!」
「何となく。」
俺がいい終わる前に断るくらいなら、「はっきり言え」とかいうなよ悲しくなるわ! しかも眉一つ動かさず淡々と言いのけたし。しかも何となくって理由になってない。
「じゃあ、なんで断ったんだよ。」
「なんでって…周(あまね)、僕たちもう高校生だしさ…わかるだろ?」
勇鶴はそういって、頬をほのかに赤く染めながら俺から目をそらした。…何でそんな乙女みたいな反応するんだよ。
「はっ、まさかお前俺のこと好きで一緒にいるのが恥ずかしいとk」
「……殺すぞ」
「すんませんっした!」
俺は道の真ん中で反射的に土下座をした。勇鶴は射るような冷ややかな視線で、聞いたことがないほど低い声だった。何故か震えが止まらない。
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