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「…どうしたんだい?そんな顔をして。」
いつのまにか、自分の世界に入ってしまっていたようだ。観察できる時間は短いが、考える時間は山ほどある。私は彼女を観察するため、また彼女を見上げた。
「なんでもない。気にするな。」
私がそういうと、彼女は不審そうに表情を曇らせた。
ふむ…隠し事が嫌いなのか。私の言ったことをうのみにしない程度には、鋭いのだな。私はさらに探りを入れるべく、彼女に問うた。
「聞きたいことがある。何故、そんなに他人に優しくするのだ?己の身を削ってまでして何を求める?」
いささか唐突な問いではあるが、一つの質問をするために無益な会話をしようなどというふうには思わない。案の定彼女は驚いたようだが、私の質問の真意を問い返そうとはしなかった。理解が早いようで、こちらとしても助かる。
「随分と唐突に難しい問いを投げかけるね。…別に、困っている人を放っておけないだけさ。情けは人のためならず、だよ。まぁ、おせっかいって言われることも多いけど。」
彼女はそういうと、軽くわらった。私が考えたことと同じように言っている。しかし、本当にそうならば更なる疑問がわいてくるのだ。
「では、それが己に返って来ることはあるのか?自分がしたことと同じ分…。おせっかいと言われてもなおそれを続けなければならない理由は何処にある?」
私がそう問うと、彼女は虚を突かれたようだ。まぁ、普通の人ならばその回答を聞いただけで会話が終わるであろうから、無理もない。このようなことを聞かれたことがないのか、少々沈思する。
「理由…そう呼べるものはないかな。なんていうか…気分や感情的な問題かな。後で、助けてあげればよかったな、なんて思うよりも、やってみてダメっていうののほうが気分がいいんだ。」
気分…感情…やはり、わからない。こればかりは、聞いてどうにかなるものでもないだろう。
「なるほど、ありがとう。」
私は淡々と彼女に礼をいった。それと同時に、始業のチャイムが鳴る。すると彼女は、私に向かって
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