哲学少女の恋愛講座

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 私の思考が正解であると思われる解答を導き出すとともに、久坂部さんが戻ってきた。走ってきたのか、軽く息が荒い。時計を見るとあれから十分。職員室からこの教室までは大体それぐらいだが、荷物を持った女子に合わせて行ったのだから、帰りは随分急いだであろう。…私のために、か。少し、それをうれしく感じた。やはり、おかしい。 「いや、ちょうどよかった。」 「…?」 彼女は私の回答に疑問符を浮かべながら、歩み寄る。そう、私は彼女に問いたかった。私の結論は、あっているのか。こんな結論になど至ったことがない。故に、私は断定できないでいる。もとより答えなどないのだが、私はその答えを求めているのだ。とても、非合理的だが…。 何故かは、今はどうでもいい。 「私は、貴女に恋をしているのだろうか?」 ・・・・・・・。 しばしの沈黙。彼女は一瞬固まった後、よく通る声で叫んだ。 「え、えええ!?」 そう、それが私の結論。興味を超え、今まで感じたことがない感情を催す相手…。 人は、それを恋と呼ぶのだ。普通は同性に恋などしないから、驚くのも無理はないが。 「こ、恋?僕に?」 彼女はそういうと、いつもは見ることのできない表情を見せた。言葉で言い表すことが難しいほど、ころころと複雑な表情を変える。ふむ、面白いな。 「他に誰がいる。」 ほかのクラスメイトは、早々に部活動をするため教室から出ていた。つまり、今教室にいるのは私たちだけなのだ。 「え…えーと、それは、本当に恋なの?」 彼女は顔を真っ赤にしながら、驚きすぎて呂律が回らない状態で問うた。 「だから、尋ねたのだ。これは恋なのか、と。」 私は尋ねただけで断定などしていないのだ。それなのにどうしてこんなにおどおどとするのだろうか? 「あ、そ、そうか…。」 そういうと、彼女は深呼吸をし、 「どうして、そう思ったの?」 と、まだ赤い顔で尋ねた。理由、か。確かに、一方的に話しかけていた人にいきなりこんなことを言われたら尋ねたくもなるだろう。 「貴女を目で追いかけてしまう。話したいと思う。貴女といると、いろいろな感情が入り乱れる。これは、一般的に恋というのだろう?」 私がそういうと、彼女は沈思してからさっきとは打って変わり、落ち着いた声で言った。その表情は何故か、どこか淋しげに見えた。
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