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「…その理論で行くと、僕はいろんな人に恋していることになるね。」
いろいろな人に…?私は、初めてなのに?
「俗にいう、浮気性、というものか?」
人を好きになりやすい人がいるときくが、私にはわからない。
彼女はそれを聞くと、また赤くなる。
「う、うわ…!違うよ!これは、その…友愛、っていうものじゃないかな。ほら、友達として好きってよく言うだろう?」
友達として…?
「その二つの違いは?」
同じ愛情ならば、違いはないはずだ。何故なら愛情というのは、仮に感情という見えないものに名前を付けた、というだけのものであるのだから。
「…言葉では、説明できないかな。」
では、どうやって答えを導き出せばよいのか?これはおそらく、理論だけではわからない。謎が多すぎる。かといって、感情論に任せて考えることは、私には、できそうにない。私は俯き、また一人で考えだした。その時、私の目の前に手が差し伸べられた。
「だからさ、僕と二人で見つけないかい?」
彼女を…久坂部さんを見上げると、今までで一番、楽しそうに笑っていた。なぜ、こんな表情をしているのだろう。
「三人そろえば文殊の知恵っていうじゃない…まだ一人足りないけどさ。その答え、僕と一緒に探さないかい?」
誰かと、一緒に?そんなこと、考えたこともなかった。他人は観察する対象で、思考は一人でするものだ。
その時、私はある矛盾を見つけたのだ。答えは無限にあるといいながら、私は他人との関係という多くの答えがあるものに対して、答えを押し付けていたのだ。
「…どうやって?」
相変わらず、久坂部さんは不思議な笑みをうかべる。その表情からは、考えが読み取れない。
「君は、感情…というか、経験に乏しいんじゃないかな?考えるけど、行動しない。」
…確かに、言われてみればそうである。観察と考察だけでは、わからないこともあるのだ。彼女は、私では気づけないことを、教えてくれる。
「だから、行動してみない?それでさ…もしよければ、文化研究会…僕と同じ部活動に入らないかい?」
文化研究会?聞いたことのない部活動である。部活動というものをしたことがない私からすれば、活動内容が全く分からないところは数多く存在するわけだが。
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