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人は、誰だって一度は夢を見る。
将来はこんな仕事に就きたい、こんな人になりたい、こんな家庭を持ちたい。
私にも、夢がある。絵本の中のお姫様のように、いつか素敵な王子様に会って、幸せに暮らすこと。
なのに、歳を重ねていろいろなことを知るたび、人は「希望」や「夢」を忘れていくのだ。
「そんなの、現実的に考えてありえない」って
でも私は、忘れたくない。諦めたくない。
私は、現実なんかに左右されたりしないのだ。
* *
「んー…今日もぽかぽかしてて気持ちいいなぁ…。」
私は部室で一人、伸びをしていた。秋にしては涼しい日が続いていたが、今日は久々に暖かいので、うとうとしてしまう。
私は文化研究会という部活動に所属している。名の通りさまざまな文化を調べたり考えたり、体験するという変わった部活だ。簡単に言うと、文化部をごちゃごちゃに混ぜた感じ。そのため、自由すぎて部員は三人しかいない。しかも、そのうち二人は兼部している。…私もかくいう一人で、美術部と兼部している。といっても、こちらにいるほうが多いのだが。何となくなじめないんだよね。
私は小説や漫画、詩などを書いている。と言っても、ロマンチックな恋愛ものばかりなんだけど。そういう本を書いていると、まるで自分が主人公になったかのような感覚に陥る。私は、それがたまらなく好きなのだ。いつか、自分に訪れる運命てきな出会いを想像してると、止まらなくなる。…今はなぜか思いつかないんだけど。
誰か、物語の参考になる人は現れないものだろうか?
「暇だなぁ…。」
仕方ないので、私はノートを開き、新しいアイディアを考える。でも、どれだけ考えても、ノートは白紙のままだ。ずっとこうしていると、だんだん淋しくなってくる。誰かこないかなあ。
ガラ…そんなことを考えていると不意に扉があき、背後から少し低めのきれいな声が聞こえてくる。
「こんにちは。遅くなってすまないね。」
私は、その声を聴いてすぐ、席を立ち振り向いた。その表情は、自分でもわかるくらいにゆるみきっていた。
「王子っ! 遅いですよ。さびしかったです。」
私はそういうと、王子に抱き着き、胸のあたりに顔を埋める。少し高めの体温が心地よい。すると、王子は私の頭をなでながら優しくいった。
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