妄想少女の夢講座

5/9
前へ
/9ページ
次へ
いつか、白馬に乗って私をつれさってくれないかなぁ…なんてことを考えてしまうほどに。 「初対面の時からずっとこうだよ。かわいい子に王子って呼ばれるのはうれしいしね。」 そういってニコリとほほ笑む王子。相変わらず素敵ですね…! 「そうなのか。興味深い考え方だ。」  そういうと、智怜先輩は考えこむように黙ってしまった。それから、しばし沈黙が続く。 …はっ、まさか、構ってほしいのだろうか?話しかけたいけど、恥ずかしい…だから本当はとてもさびしがり屋だけど、それを隠してるとか…? なんてかわいい…!  心なしか、智怜先輩がちらちらとこちらを見ているように見える。これは、仲良くなりたい合図!? そうか、先輩のほうが年上だけど、慣れない場所で初対面の人といるのは心細いはず! 私が盛り上げないと! 「智怜先輩!」 私がそういうと、先輩はゆっくりと顔を上げた。 「智怜先輩は、この文化研究部のこと、詳しくご存知ですか?」 すると先輩は首を縦に振る。その動作一つで、私のテンションゲージは0になる。せっかく、話す内容が見つかったかと思ったのに。 「聖さんから概要は聞いている。」  …確かによく知らない部活に入ったりしないよなぁ。えっと、ほかに聞きたいこと… 「智怜君は、人の感情を研究したいらしい。夢とか、恋とか。だから、君にも協力してほしくてね。…いいかな?」 「もちろんです!」 仲良くなりたいのに会話の内容が思いつかなかったので、とても助かった。しかも私の好きな分野だし、答えにも困ることはなさそうだ。 「よろしく頼む。」 私は智怜先輩が静かに言ったその言葉がうれしかった。何となく、さっきまでとは違って、感情がかすかに入っていた気がしたからだ。  それを見ていた王子は、くすり、とかすかに笑った。そして、智怜先輩にむかって、こういった。 「心くんの小説は面白いから、よければぜひ読んでみればいい。何か、ヒントになると思うよ。」 王子に褒められたのはうれしいが、ただ自分の理想を書いているだけなので、その言葉で無駄に期待されるのは、恥ずかしい。 智怜先輩はこくりと頷いてから私のほうにゆっくり近づいてきた。その黒い澄んだ瞳は私だけを見つめている。 「まず、問おう。心さん、友達としての好きと、恋愛の好きの違いは、何だと思う?」 「ふぇ?」 何とも答えにくい知るもんである。私でさえよくわかってないし…。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加