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「そんな事言ってる場合か?
先に逃げ出した魁人達の方にも
死人がいるかも知れないのによ。」
山伏の意見に佐野は
『死人がバラけるのを待っている
時間は無い』と言う。
「…………崎も死んで、他に誰か
死んでなきゃいいんだがな。」
そして杉村は脱出したメンバーが
他にも死んでいないか
少し焦りを際立たせていた。
「‥‥こ、ここから中央通路に出たら
あの大勢の死人を相手にしなきゃいけないの‥‥?」
これから向かう校門への道に立ち塞がる
死人の大群を茜も怯えながら覗き込んだ。
「ウゥゥ………」「アァァァ………」
止まらない食欲と満たされない空腹に
苦しむ呻き声を発しながら獲物を探して
彷徨う死人の群れ。
『そうとう腹減ってんだな!
オレも飢えた時の苦しみはよーく分かるぜ!』
王羅はその空腹に苦しむ死人達に
何故か誇らしげに同情する事を言った所、
「それは単に朝飯食い損ねて
昼まで腹が減ってただけだろ?」
的を得た様に山伏が指摘する。
「じょ、冗談を言ってる場合ですか?」
王羅のボケなのか素なのかわからない
言動にツッコミを入れてみる佳奈だが、
この状況では和むことはない。
それも仕方のない事。
既に仲間が1人死んだのを目撃し
その追悼まで行ったのだから。
「なんとか本校舎の方に誘導出来ればなぁ。」
山伏が何処か虚ろになりながら
突然そんな事を呟いた。
すると間髪を入れずに佐野が
「今のアイツらは目も見えてんだから
見つかるだけで終わりだぞ?」
と苦笑いを浮かべながらとてもじゃないが
誘導は無理だろうと言って否定した。
「やっぱそうか……うーん‥‥」
体育館裏の端で立ち往生してしまう山伏達。
門までは目の前の中央通路に出て
真っ直ぐ進めば外へ逃げられる。
しかし其処はとても険しくて
困難な道となっていた。
門までの長い道程。
険しく聳え立っている障害が
長い道をより長く感じさせる。
『障害』を越えるのが困難で
『死』のリスクも高く、
何より時間が掛かる。
『‥‥‥このまま立ち往生してても仕方ねぇな。
全員釘打機を構えてくれ。』
立ちはだかる死人達に対して
山伏は無鉄砲な作戦を決行しようとしていた。
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