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「………わたし、家庭科室にいた時言ったよね?
『1人で戦おうとしてる』って」
じっと山伏を見据えた目で話し出した茜。
ここまで怒りと悲しみが混ざり合った茜の顔を
山伏は今まで一度も見た事が無かった。
「…………あぁ、でも作戦は1人じゃない。
佐野と王羅がいる………。
別に残って死ぬつもりなんてない。」
初めて見せる茜の顔に気圧されるも
念を押すかの様に説明する山伏。
(家庭科室‥‥ってテーブルに
ランプを置いて話してた時のこと?)
あの暗闇の中、佳奈はこっそりと
茜と山伏の会話を盗み聞きしていたのか、
その時の光景を思い返す。
『でも佐野も王羅君も
さっきまで中庭の死人を何十体も倒してたのよっ?
それに雄だって利き手を怪我して
その棒を上手く使えないでしょっ!?』
茜の鋭い指摘で山伏も一瞬戸惑うが
直ぐに冷静な顔へと戻り
『確かにそうだ、オレは怪我で
鉄の棒を振れない。
でもこの状況から逃げ出すためには
前線に2人だと厳しいだろ?
だからオレも出るんだ。
3人の特攻と3人の援護、
これで上手くバランスが取れる筈だ。』
と現状の戦力と前衛、後衛の
バランスを配慮した結果導いた答えだと
最もらしい言葉で返す。
すると杉村が
『‥‥明るくなってきた
死人が直こっちに気付くぞ。』
と空を見上げて言った。
杉村が言った通り、
徐々に淡い朱色に染まり始めた空。
太陽も地平線から顔を出そうとしている。
暗闇で目が見えない死人は
明るくなれば此方が自然と見えるようになる。
視力は元人間だった時と同じなのだろうか?
『もしその作戦で3人が前線で戦って、
その間にわたしたちが
逃げながら援護したとしても、
雄達が大勢の死人を相手にしている間に
時間が掛かって朝日も出てきて、
結局全部相手することになるんじゃないの?』
『━━━━ッ!?』
茜の意見に圧倒される山伏。
しかし、その作戦には山伏のある思惑と
ある意思が関係していた。
「‥‥‥お前、━━━━━
━━━━"本当"は分かってただろ。
そうなることぐらい
作戦を考える前から分かってただろ。」
先程まで山伏の作戦に従おうとしていた佐野が、
今度は山伏の首を取る勢いで鋭い言葉をぶつけた。
「……………。」
山伏はそのまま言葉を
失ってしまったのか堅い表情になる。
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