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杉村はそんな山伏を黙って見ていた。
この争論がどんな結末になるのかを
見届けるかの様に。
「………そ、そうなのか?」
王羅は山伏の作戦にそんな穴がある事すら
理解していない為か、
一人会話から置いて行かれていた。
『どういうことですか?
わ、わたしっ山伏先輩が
死ぬかも知れないのなら反対ですよっ!?』
佳奈の切実な想いで訴えられるた山伏は
無言で目を瞑ったまま口を閉ざしていた。
終わりの始まりから1日経過。
━5:24━
『……そうだ。
分かってたよ、この作戦で行くと
どうなるかなんて。』
開き直った様にそう言った山伏。
『か、からかってるの!?
雄の命も掛かってるのよ!?』
茜は先程よりも動揺してしまい
上手く話せないでいる。
山伏の真相を知るのが怖いのか、
怖がらずにはいられないようだ。
『からかうつもりもない。
とにかく、この作戦でいいんだ。』
そして山伏も一切意思を曲げる気も無く
作戦は決定とした。
『ど、どうしてですかっ?
わたしは反対ですっ!
死なないでくださいっ』
ついに佳奈も押し殺していた
感情を抑えきれず山伏に反論する。
その時、
「‥‥それ以上声を張り上げたら気付かれるぞ。」
杉村が咄嗟に茜と佳奈の興奮して
止まらなくなる前に警告した。
「…………どんな考えがあるの?」
茜は足を震えさせながら山伏に聞く。
声もだいぶ小さくなる。
掠れた声は茜の今の心情を強く表していた。
しかし、山伏はその作戦に
拘る理由を話そうとはしない。
「どういうつもりなんだ?
前線で戦うオレには知る権利はあるだろう?」
茜と佳奈の代弁するかの様に
佐野が作戦の目的を聞いたが
『‥‥それは作戦を実行したら教える。』
作戦の実行までは断固として
話す気は無いと拒否した山伏。
『いくら、真の漢でも
死人と一緒に死のうとすれば
現実から逃げるシャバイ奴と同じだぞ?』
そう言って山伏に指を差す王羅。
その目は薄明かりの中にいながらも
輝きを放ってその存在を訴えていた。
しいて言うなら闇の中で命の如く輝く光。
そんな真剣な眼差しで山伏を捉えていた。
茜と佳奈のためにも
山伏は生きなければならない。
山伏だってそれを分かっている筈。
それなのに何故リスクの高い方法を選ぶのか。
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