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「別に良いじゃない、私、これが好きなんだから。こうやって、一瞬一瞬をカメラに収める事で、もう訪れないその時その場所を閉じ込めおく。まるで時代を切り取って…、そして、これからずっと思い出とし記録でき、何十年経っても記憶を呼び覚ます事が出来るのよ。素晴らしいじゃない」
自分が、記録者でも言いたげなその言葉と、自信に満ちた表情にユラは感度をエーファは呆れていく。
「いや、思わない」
ヴァーシャの力説に、初夏の部室の茹だる様な暑さでうんざりしているのに、余計に暑さを感じ手で顔を仰ぐ。
「だってそれ、ビデオでもいいんじゃん」
「分かってないわねエーファは。カメラだからいいのよ。遥か大昔に、ビデオよりも先に出来た先人たちの知恵の結晶、発明品であるカメラが味があって」
「そんなもんかね…」
「そうだよ!。一瞬一瞬が大切なのよ、記録よ味があるのよ!」
目を輝かせ、鼻息を荒くしながらエーファに詰め寄るユラに、思わず座っていた椅子を引きずり後ずさりする。
「ち、ちょ…、あんた、自分で何言っているのか分かってるの?」
「さぁ?」
意味も分からず、勢い任せで口にした事に、自分自身も曖昧さに気づき、小首を傾げている。
「さぁ…て、おまえな~」
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