1.旅立ちの分枝

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「どっちでもいいですから、早くしてくださいね。つまらない劇ですと、評価を下げられてしまいますから」  後輩の嫌味が胸に刺さる言動に、声を上げて怒鳴りたくなる気分だが、部長である自分が冷静にならないと思い、必死に胸の内に隠しながら咳払いをする。 「あ~、ねぇユミハ」 「何です?」 「そういう事を言っている君は、今何をやっているのかな~?」 そう言いながら、ユミハに歩み寄り、作業している端末のモニターを覗く。 「これですか?。人形のプログラムです」 「プログラム?」 その言葉に、ヴァーシャもユミハに駆け寄り、ユラもそれに追随してモニターを覗き込む。 「幾つかのパターンを作っておけば、演目に合わせ調整するだけで良いのですから。まぁ、手直しは必要になるかもしれませんが、後で突貫で作成するよりはいいかもと思いまして」 「「「ほぉ…」」」 用意周到な後輩の行動に、関心を寄せながらも、去年徹夜で突貫作業していた、自分たちの行いに自己嫌悪を起こす3人。 「でも、プログラムは良いとして、毛糸はどうします?。流石にユラ先輩が遊んでした毛糸じゃ足りませんし、古いやつですと糸が認識してくれるかどうか…」 「うちの部、予算なしね~。去年も古いのを解して作ったけど…、誤作動しちゃったから…」     
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