1.旅立ちの分枝

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苦笑しながらユラは、自分が編んだ人形が誤作動し劇がお笑いになってしまったのを申しわかないという気持ちで心残りだった。  そんな心境を察したのか、ヴァーシャはユラの肩に、そっと手を置く。 「あれは、ユラだけのせいじゃないわよ」 「そうそう、あれはあれでウケたし」  事の原因を作り出した本人が、羅漢的で反省の態度を感じさせない言動に、思わず声を荒げてしまう。 「あんたは、もう少し反省する気持ちを持て!」  エーファの緊迫感の欠片もない楽観的なその姿は、再び思いこされる、去年の劇の悪夢を呼び起こすのではないかと思い、4人の頭には、言い知れない不安が時間だけが、過ぎてしまうでのはないかという思いにさせていく。 「おまたせ」  軽妙な明るい声と共に、部室の扉が開かれた。 「ごめんなさい、選ぶのに時間かかっちゃっ…て、何か…、暗いわね」  部室の空気の重さに、コルネリアは垂れた瞳を丸くしてキョトンとし、高々と上げていたたアイスケーキのケースをゆっくりと下ろす。  コルネリアの帰還により、重く暗い負の連鎖に陥るのを断ち切る事の出来る状況に、4人は行き場のない不安と嫌悪感から救い出され、安堵の表情をしながらも、複雑な心境でコルネリアを迎え入れたのだった。 「おかえりなさい」 「「「おかえり」」」
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