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「プレゼントは、何の取り柄もない俺。
王子様よりパイロットより、優しさだけは、誰にも負けない。どう?今年の誕生日プレゼントに」
いつもの冗談かと思ったのに、思わぬプロポーズに心臓が、ドキドキした。
その鼓動を抑えながら、
「どうしようかな?」
彼に背中を向けて、悩み始めた。
しかし、本当は、悩んではいない。香織は心の中で、
(答えは決まってるわ。でもあっさり『はい』って言ってあげない)
我がままを再び、楽しんでいた。
彼女の小さな背中を見つめながら、彼も又、冷静を装っていたが、内心、気が気ではない。
プレゼントを忘れた訳ではない。指輪も既に用意してある。
同棲を決めた時から、今日、この日にプロポーズをしようと決めていた。
後は、彼女の答え次第。
5分過ぎ、10分過ぎ、まだ香織は背を向けたまま。
(作戦失敗?)
彼の目に動揺が、出始める。
(そろそろ良いわね)
香織はふり向き、
「仕方ないなぁ…貰ってあげるわ」
渋々と言ってるつもりだが、嬉しい顔が溢れないようにしていた。
その答えと表情で、ほっと胸を撫で下ろし、そして、
(よし!)
心の中でガッツポーズをした。
彼は、これを待っていたから。
「あっ、プレゼントだからって、自分にリボン付けてこないでね!」
嬉しさが弾けて香織は、冗談を言う。
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