3月、その日。

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何が欲しい? も先日きかれた。検討違いのものを買ってきて喜べずに「せっかく買ってきてあげたのに」と文句言われるのはまっぴらなので正直に「いらない」と伝えたはずだが準備してしまったらしい。どんな不要品を押し付けられるのやら。 でかくて平べったい段ボールを、母親が父親と協力してリビングに運び込んできた。開封し、組み立てたのは家庭用の卓球台。最悪だ。数日前に確認した粗大ごみ の日が三日後だったことは今でも覚えている。 私は中高と部活として卓球を本気でやってきている人間。上手いかといえばたいしたことはないかもしれないが、プライドはある。家庭用卓球台は競技用よりひとまわり以上小サイズの上板は跳ねないし、ネットも低い。これでは練習どころか感覚が狂う。それを喜んで当然と突然押し付けるのだ。 吹奏楽部だった人ならサキソフォン担当の人にプラスチック製のオモチャのサキソフォンをプレゼントするようなものと言えば伝わるだろうか。文化祭の合奏でエレクトーン担当になったから毎日放課後に音楽室で練習している人に幼児用トイピアノを渡すようなものと言えば良いだろうか。 それが重量物でなければぶん投げていた。 理性をかき集めて嬉しい、ありがとうと脳内台本を読んだ。笑顔を作るのは失敗したが許容とする。 私はこの後、時々この粗大ごみを出してきては喜んで使ってるよアピールをするはめになった。 親に頼らずとも生活できるようになってから振り返って、よく耐えたと思う。そこまで我慢せず、本当にごみに出せば良かったと思う。
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