紺色傘が開かれる時

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帰ってくればいつもより甘えるようになるのだから、平気と言うわけではないのだろうけれど。小さくても強がるところは男の子なんだなと、成長を嬉しく思い、そして少しだけ寂しくも思う。 子どもの成長は早い。あっという間に、大きくなってしまう。 「傘を持っていけよ、今日は降水確率も50%らしいし。俺は迎えに行けるか分からないからな」 ドアを開けかけたところで、後ろから声がかかった。 「迎えに来てもらおうなんて思ってないよーだ!」と、心の中で毒づきながらも表面上はにこやかに返す。 「荷物になるし、綺麗な傘がないからいいよ」 傘をさすのが嫌いな私は、滅多に傘を買わない。おまけに持って行った日に限って、大体忘れてくるのだ。 普段だったらビニール傘で済ますことに抵抗を感じないけれど、結婚式にビニール傘は流石にちょっと恥ずかしい。 「濡れるよりましだろ。ほら、そこにずっと置いてある折り畳み傘にしろよ、あれ咲のだろ」 「折り畳み?」 折り畳み傘なんて、ここ数年買った覚えも使った覚えもない。 啓ちゃんの指さす玄関収納を開けてみたけれど、やっぱりいつもの傘しかなかった。 「ないよ、そんなの」 「一番上の棚にあるんだよ。この前探し物をしていて見つけた」 啓ちゃんは面倒くさそうに三和土に下りると、私の届かない一番上の棚に手を伸ばした。 「はい、これなら邪魔にならないだろ。大体さ、傘を買えって前から言ってるのに」 渡された紺色の傘にトクンと胸が鳴った。 「あ……こんなところにあったんだ。なくしたと思っていたから。ありがとう。もう時間だから行ってくるね」
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