紺色傘が開かれる時

5/24
前へ
/27ページ
次へ
*** 「うわ、すっごい雨」 誰もいなくなった教室から、バツバツと窓の外の地面を叩きつける雨を私は見ていた。土の上を水が大きく跳ねている。 今日は雨が降るわよと、お母さんに言われたけれど、いつものように傘は持って来なかった。 自分が濡れるのは構わないけれど、借りた本が濡れるのは困ってしまう。 まだ昼間だと言うのに、空は薄暗くどんよりとしていた。 忘れ物を取りに戻った校舎には、もうほとんど人が残っていないのか静まり返っていた。 終業式が済んだ途端に、みんな夏休み気分の晴れやかな顔になって帰って行ったんだろう。 私だってそうだ。明日からひと月はここにじっと座っていなくていいと思うと、晴れ晴れした気分になる。 どうせなら、このまま学校なんてなくなっちゃえばいいのに。 そう小さく呟いて、私は窓ガラスにコツンと額をつけた。ガラスからひんやりとした冷たさが伝わってくる。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加