紺色傘が開かれる時

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でも、それが英美に何か不都合なんだろうか。 英美の彼女を見る目はとても、意地悪く見えた。 私は自分も同じ顔をするのは、なんだか嫌だなと思ったのだ。 そのクラスメイトのことが好きだったからとかそういうわけではない。 あまり話したこともない子だったから。 「ふうん。でも、私は無視とかするのは好きじゃないから」 そう言った時、いつも冷静そうにしている英美の顔が醜く歪んだのが分かった。 ああ、英美を怒らせたなと思った。 「私、咲のそういうノリの悪いところ大嫌い」 授業中、英美はずっと私のことを無視していた。 その日からずっと私はクラスで浮いたままになった。 他にも英美やクラスメイト達が私を気に入らない理由はあったのかもしれない。 けれども、きっかけはそんな些細なことだった。 中学に入り、小学校の時ほど露骨な嫌がらせはされなくなった。 英美が私学の中学へ行き、扇動するリーダーがいなくなったからだ。 けれども、私が嘲笑や蔑みの対象であることに変わりはなかった。 一度ついてしまったイメージを覆すのは難しい。彼らにとって私は、蔑んで良い存在だった。そして、私も彼らの目を怖れるようになっていた。 とにかく目立たないようにしていた。目立つから叩かれるのだと、悟ったからだ。      良くも悪くも目立ってはいけない、私の存在を思い出させてはいけない、そう思って息を潜め毎日を過ごした。 休み時間はだれとも話さずに、本を読んで過ごす。本を読んでいれば、だれかと目が合うこともなかったから、自分が一人だということを意識しないでいられた。 それでもだれかが近くでこっちを見て笑っているのに気づくと、あの時英美が無視しろと言ったクラスメイトの子みたいに、私の体はこわばり、怯えた表情になっていしまう。 体に染み付いてしまった支配される感覚は、そう簡単には消えてはくれないのだ。
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