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「今日は、栗原さんの誕生日なんだ。船山も知ってるだろ?栗原さん。」
総務の栗原さんを知らないものはいない。うちの会社の新人教育を担当する定年間際の男性社員だ。服部さん、よく誕生日を把握してましたね~。
「ああ!新人の頃お世話になりました。温厚な方ですね。いつも背筋がピンとしていて、和服が似合いそうです。」
新人研修の時、何か武道をしていたのかと聞いた奴がいて。そしたら、代々社長の家に仕える執事の家系で、護身術と茶の湯は嗜まれるとか。
その栗原さんのお誕生日とあっては、一緒に祝わない手はない。皆で賑やかにおめでとうを言おう。就業時間中では気兼ねなさるかな?
「で、だな船山。仙道さん借りたから。」
はぁぁぁぁ?!また勝手に俺の部下を!!どうりで席にいないと思った…
「服部さん、俺の部下を勝手に使うのやめてくれません?上司は俺なんですっ!」
「仕事の指示なんか出してないよ!先輩社員としてお使いを頼んだだけで。」
俺の部下なのに何を勝手に…と、ブツクサ言う俺を無視して、服部さんは話を続ける。
「あんなイケメンが、ケーキ屋で恥ずかしそうに買い物をするところ、見てみたくないか?お使いを頼んだのさ。駅前のレミーまで。」
…ぴくりと耳が反応する。
「あの、店内が白とピンクで飾られたレミーですか?」
「そう!やたらと凝った、メルヒェン~な名前のケーキが並ぶスイーツ屋のレミーさ。」
女子に大人気の店だが、俺らには敷居が高い。
アラサーリーマン野郎はメルヘンには縁遠いのだ。
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