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「藤寿!!歯ブラシはここやないって何回言うたらわかんの!?」 返事はない。 幸運寺は関西某所、長く緩やかな石段の上にある。 読経の声。 寺の朝は早い。 明け方にはお勤めの時間が始まる。終わった頃には妹の鹿居樒(カイ シキミ)が起き出し、朝食の支度をする。 そろそろ秋も深まり、昼間でも肌寒くなり始めた頃。 市街地ではファッションビルや遊戯施設が建ち並び、開けた一角もあるけれど、比較的近くには山や畑の緑も見える。 車や単車がないと多少の不便はあるものの、町と田舎が混在する、コオロギが鳴き、蛍が戯れる、ゆったりとした土地柄だ。
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