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目を覚ませば、そこに広がっていたのは平原。
そして、一本の道だった。
しかし、覚醒したばかりの俺の頭は、うまく回らない。
つまりは、現状を整理できていない。
「ここはどこだ」
ぼそりと呟いた俺の言葉は、広い平原に呑まれていく。
その言葉を聞くものなど、辺りには存在すらしない。
周囲を確認するように見渡している間、少しずつ動き出した頭で、取りあえず現状を整理してみる。
あの時、俺の上に降り注いだ鉄骨。
それが俺を押しつぶし、体を貫いた。
痛みなんてものは、一瞬のうちに無くなり、徐々に体温は下がり、やがて俺は眠った。
俺はあの時、確かに死んだのだ。
「ってことは、ここはあの世の世界ってことか?」
完全に覚醒した頭で、一つ一つを確認すれば、あの状態で明らかに俺は、助かるわけもなく死んだ。
なら、この場所がどこかと考えれば、死んだ後の世界としか考えようもない。
でもそんなことってあるのか?
まるで小説のような展開が、いくつも重なっている。
「まっ、深く考えても面倒なだけだし、進むか。どう考えても、誘導されてるような道だし、進めば誰かいんだろ」
深く考えることを放棄し、用意された一本道を、迷わずに進む。
ただただ何の変哲もなく続いていく道。
20分くらいだろうか、ずっと歩き続けた先に、ようやく変化が見えた。
一つだけ佇む純白の建物だ。
道もそこで途絶えているから、さしずめゴールというとこか。
俺は迷わずに、その建物のドアに触れ、開ける。
「おいおい、嘘だろ?」
開けた先に見えたのは、一つのでかいテーブルを囲む、人の形をした奴ら。
そしてその人たちの視線が、一気に俺に集まる。
「やぁ、よく来たね、人間の子よ」
一番豪華な椅子に座っている、おそらくこの中で一番偉い人らしき男が、口を開いた。
金髪に碧眼という、イケメン要素を無駄に取り込み、爽やかな笑顔と、キラキラした雰囲気を醸し出す。
世間一般で、こういうやつのことを〝王子様”とか言うのだろう。
正直、目にいたい。
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