1.異世界へ

2/9
1533人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
目を覚ませば、そこに広がっていたのは平原。 そして、一本の道だった。 しかし、覚醒したばかりの俺の頭は、うまく回らない。 つまりは、現状を整理できていない。 「ここはどこだ」 ぼそりと呟いた俺の言葉は、広い平原に呑まれていく。 その言葉を聞くものなど、辺りには存在すらしない。 周囲を確認するように見渡している間、少しずつ動き出した頭で、取りあえず現状を整理してみる。 あの時、俺の上に降り注いだ鉄骨。 それが俺を押しつぶし、体を貫いた。 痛みなんてものは、一瞬のうちに無くなり、徐々に体温は下がり、やがて俺は眠った。 俺はあの時、確かに死んだのだ。 「ってことは、ここはあの世の世界ってことか?」 完全に覚醒した頭で、一つ一つを確認すれば、あの状態で明らかに俺は、助かるわけもなく死んだ。 なら、この場所がどこかと考えれば、死んだ後の世界としか考えようもない。 でもそんなことってあるのか? まるで小説のような展開が、いくつも重なっている。 「まっ、深く考えても面倒なだけだし、進むか。どう考えても、誘導されてるような道だし、進めば誰かいんだろ」 深く考えることを放棄し、用意された一本道を、迷わずに進む。 ただただ何の変哲もなく続いていく道。 20分くらいだろうか、ずっと歩き続けた先に、ようやく変化が見えた。 一つだけ佇む純白の建物だ。 道もそこで途絶えているから、さしずめゴールというとこか。 俺は迷わずに、その建物のドアに触れ、開ける。 「おいおい、嘘だろ?」 開けた先に見えたのは、一つのでかいテーブルを囲む、人の形をした奴ら。 そしてその人たちの視線が、一気に俺に集まる。 「やぁ、よく来たね、人間の子よ」 一番豪華な椅子に座っている、おそらくこの中で一番偉い人らしき男が、口を開いた。 金髪に碧眼という、イケメン要素を無駄に取り込み、爽やかな笑顔と、キラキラした雰囲気を醸し出す。 世間一般で、こういうやつのことを〝王子様”とか言うのだろう。 正直、目にいたい。
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!