まぼろし

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宗一は辺りを見回した。が、それらしき 人はいなかった。彼は香の匂いを求めて 通路を足早に歩いた。宵の口の駅構内は 混雑していて行き交う人の顔を確認する ことは出来なかった。 早生子を思い出す度に痛む胸を抱えて 宗一は本社に戻るべく山手線に乗った。 あと幾日、夜を越えたら彼女に会える だろうか、と考えながら。      (了)
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