おまけ。またフラれるかもしれない。(三島先生編)

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Dragonはまだクローズの札が出ていたけど、 そっとドアを引くと、鍵はかかっていなくて、 ドラゴンが事務仕事をし、さくらちゃんが店に出すデザートを焼いているようだった。 ドラゴンが顔を上げ、不機嫌な顔を見せる。 「美鈴ちゃんに何を秘密にしてるんだ?」 と仕事の手を止め、呆れた声を出して俺を眺める。 「美鈴に言えない事って何? 美鈴は三島さんの秘密を知るのが怖いって泣いてた。 傷つけるのはやめてくれないかな。 他にオンナがいるなら、今すぐ別れて。」 とキッチンから出てきたさくらちゃんが冷たい目で俺の前に立つ。 …昨日はかなりマズイ状況だったのかも… 「俺は美鈴だけが好きだよ。」 「あのアホもそう言って他にオンナがいたな。」 とドラゴンは口をへの字に曲げている。 「違うよ。一緒にしないでよ。 俺の秘密は俺の職業。 夜にいないのは当直と呼び出し。」 「当直?」 「だからさ、俺は医師だよ。潮騒療養所の麻酔医なんだよ。」と白状すると、 「へ?…秘密の部屋は?」とドラゴン。 「書斎に医学書や医学雑誌が山ほどある。」 「ば、…馬っ鹿じゃない?!なんで高校の教師だなんて言ったのよ。」 「最初に会った時、…美鈴が医師とはもう付き合わないって言ったんだよ。」 俺がため息をついて言うと、 ドラゴンとさくらちゃんが思い切り呆れた顔で俺を見ている。 「当直の時はすぐに連絡が取れないだろ。 医師だって言えなくって誤解させた。…美鈴…泣いてたよな。」 「…馬鹿」とさくらちゃんがつぶやき、 「迎えに行ったら?今日は日勤だったと思う。」とキッチンに戻って行った。 「ご心配をおかけしました。」と俺が頭を下げると、 「仲直りして、店に来いよ。」とドラゴンがちょっと笑う。 「許してもらってプロポーズするよ。」と言うと、 「ま、頑張って。三島先生。」 とドラゴンはニイッと口の端をあげ、 手をヒラヒラ振って仕事に戻った。
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