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「すいません、寝坊しました」
ディアは扉を開いて、第一声に謝った。
誰にか
勿論扉の先で、イライラしているこのクラスの担任にだ。
長い白銀髪に赤い瞳をした、目付きの悪い男、クロバール・フィルナンデスは、ディアに鋭い目を向ける。
それはまるで、静かに怒っている獅子の様だ。
「転校初日に遅刻たぁ、いい度胸だ、ディアール・ルディルフ」
「クロバ先生、折角のいい顔が台無しですよ?」
ディアはクロバの様子に、さして気にしていないように、首をかしげる。
まるで恐れを知らぬ、子供のように。
「うるせぇ、てめぇみてぇな餓鬼に、褒められても嬉しくねぇんだよ。さっさと自己紹介しろ!」
ニコッと笑って「はーい」と答え、ディアは教壇に立った。
クロバはチッと舌打ちをすると、教師にしては乱雑に黒板にもたれかかって、その様子を見ている。
「ディアール・ルディルフです。気軽にディアって呼んでください!こんな時期での転校で、不安なんですけど…仲良くしてくれると嬉しいです」
朝に、めんどくさそうな様子を見せていた、ディアとはうって変わって、明るい転校生イメージを持たせる、笑顔を向けた。
本当に同一人物か、と言わせ程の猫かぶりだ。
どこからか「可愛い」と言う声だとか、色々な反応が見受けられる。
黒白の変わった色に猫毛の髪、珍しい紫と紅のオッドアイをして、ニコリと笑う姿は、確かに周囲を引き付けるのに十分な容姿だった。
しかし、その容姿には似合わずに、耳や腕にはジャラジャラと、アクセサリーが覗く。
そして可愛い猫かぶりと反対に、身長は同学年の学生よりも高いから、何とも奇妙だ。
「おーし、後聞きたいことあったら、この後質問攻めにしてやれ」
「ぇっ、先生酷い」
「転校生の宿命だ。席は、あの空いてるとこな」
そういって指を指したのは、日の当たる、お昼寝にはもってこいの窓際の席。
「この後の時間は、新学期最初にする、属性検査と魔力検査をする。席順で隣の教室に来いよ。んじゃ、解散」
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