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ディアは目の前の、濃い紫の短髪に銀色の目をした、クロバに負けず劣らずイケメン面であるその男に、柔らかく微笑んだ。
「いいぜ、俺はアッシュタジエル・フィンクス、長ったらしいから、アッシュでいいぜ。これから仲良くしようや、ディア」
「うんっ!これからよろしくね、アッシュ」
アッシュの何とも言えない、他のクラスメートとは異なる雰囲気に、ディアは何となく惹かれていた。
もしかしたら、過去に、ディアの傍にそういう人物がいたからなのかもしれない。
このときディアは、心から笑顔になっていたことに、気づいてはいなかった。
「おっ、次は俺の番か。ちょっくら行ってくるわ」
「うん、いい結果だといいね」
ガタリとアッシュは席を立ち、教室を後にしていった。
その様子を、一部始終見ていた他の生徒は、何故か安堵のため息をつく。
勿論、それにディアが気づかないということはなく、なんとなくそれで悟ってしまう。
アッシュはこのクラスのメンバーに、少なからずともよく思われていない、と。
だが、そんなことはさして気にしていない様で、隣の教室で行われているであろう属性、魔力検査をこっそり見るために、ディアは無属性の透視魔法を使う。
透視魔法は初級から上級まであり、初級だと精々近くのものを透視しできるだけだ。
しかし中級となればその範囲が広がり、上級となればはるか遠くまで、そして場合によっては、結界の張られたような場所の深層までも、見通せるような魔法だ。
検査の行われている部屋には、クロバの張った結界が張られている。
しかし、ディアはそれをものともせずに、教室の様子を見ていた。
上級の透視魔法を使える、ということだ。
「さぁて、お手並み拝見と行こうか、アッシュタジエル」
ディアは誰にも気づかれることなく、本来の企むような笑みを浮かべていた。
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