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我ら兄弟は日増しに大きくなっていった。母君に乳を貰い、捕らえたネズミで狩りの練習などもした。
とはいえ我輩は狩りの練習などせずとも大丈夫だった。前世で培った知識にて、狩りなどお手のものだから。だから魔法の練習のみを繰り返していたのだ。
しかしそれは困難を極めた。やはりこの口では呪文を詠唱するのは難しいようだ。『ミャア、ミャア』と可愛らしい響きにしかならぬ。しかもこのプニプニした肉球では印すら結べぬ。
どうしたものかと、思考にくれていたその時だった。
「捕めだぞ!」
突然、人間の言葉が響いた。
『隠れるんだよ!』
咄嗟に母君が言った。呼応して我輩と次兄が物陰に隠れる。意識を集中させて、辺りの様子を窺った。
『ミャア、ミャア』
響き渡る物悲しき鳴き声。あろうことか末弟が、老婆に首を捕まれていたのだ。
『弟よ!』
沸々と沸き上がる憤怒の感情。仮にも兄弟として生まれた存在だ。流石にそれは衝撃的な光景だった。
「やれやれ一匹だげがい」
ぼそりと呟く老婆。末弟だけでは飽き足らず、強欲な台詞だ。
『フニャーー!』
それに向かって母君が吠えた。老婆の前に身を晒し『その子を返せ』と捲し立てる。危険とは理解しても、母性本能がそうさせるのだろう。
「このやろ、家ん中さ上がり込んで、泥だらげにして!」
すかさず腕を伸ばして捕らえようとする老婆。しかし母君は俊敏だ、その攻撃はかすりもしない。暫くその必死の攻防戦が続いた。
「バッパだと思って、ナメてけつかって……」
やがて老婆も諦めたか、ぶつぶつ怨みの念を吐き捨てながら邸宅内に姿を消して行った。
こうして場は、元の沈黙に包まれる。
『……弟はどうなるのでしょうか母君?』
我輩は訊ねた。流石に気がかりだった。
『悔しいね、あのまま殺されちまうんだよ。人間に捕まったっていうのは、それを意味するのさ』
虚しい響きだ。それ以上なにも訊けなかった。小動物に生まれ堕ちた我が身を呪った。
それ以来、末弟は姿を現さなかったのだ__
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