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次兄は自動車に吹き飛ばされて、無惨にも道路に転がっていた。
助けに行きたくとも、我輩身体が硬直して動けない。例え助けに行けたとしても、ネコの我が身でなにが出来ようか?
『あに……うえ……』
途切れ途切れに響く声。ゆっくりと形成されるどす黒い血溜まり、その瞳が徐々に光を失っていく。ピクピクと痙攣していた手足はやがて微動だにしなくなった。
命の輝きが消え去ったのだ__
『馬鹿だねあの子は。だから注意しなさいって言ったのに』
母君が言った。抑揚ないさばさばした響きだ。おそらくだが母君は、幾多の子供や仲間の命を自動車に奪われてきたのだろう。投げやりな台詞の中にも悔しさや憎しみが籠められていた。
『これが人間のやり方なのですか』
その母君の感情は、我輩の中にも染み入ってくる。末弟に続き次兄の命まで人間の手で奪われたのだ、込み上げるのは憎悪の感情だけ。
眼前では自動車がバンバン通過して、骸と化した次兄をグチャグチャにしていく。まるでボロクズ、薄っぺらい紙切れだ。人間という生き物は、死者に対しての哀悼の念を持たないのか? 獰猛な巨人族とて死者は足蹴にせぬぞ。魔界での戦争も酷いものだが流石にここまで酷いものは見たこともない。
我輩魔王としての生き方を取り戻した暁には、人間と自動車は必ず滅ぼしてやると心に誓ったのだ__
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