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我輩は魔界を支配する三代目魔王である＿＿
端正な面構えにたくましい肉体。着込むのは漆黒のヨロイとマント。この威風堂々たる姿で、多くの男達をひれ伏せて多くの女達を虜にしてきた。
我輩の使命は神と対立し、奴らが創りし世界を討ち滅ぼすことだ。我輩はその職務を全うして神の世界と戦い続けてきた。
我輩が剣をふるえば巨大な山々が真っ二つに切り裂かれた。我輩が掌をかざせば凍てつく凍土も激しい業火で焼き尽くされた。
何千年何万年という長き戦争だった。幾つもの町が焦土と化し、死者の骸で巨大な山が姿を現した程だ＿＿
時には神が創りし人間とも戦ってきた。
人間という輩はとても脆い存在だ。そのくせ自己愛が強く、己ばかりを尊重する。物欲にまみれて、簡単に仲間も裏切る。見た目や出生に固執し、異質なものは簡単に排除する。時には深い欲望や激しい憎悪の為に、我々魔族に頼ることもあった。そもそも人間など不完全な生き物なのだ。愚かな神が創りし種族だからそれも当然である。
だから簡単に攻略できた。権力と金と異性、それにみあう僅かながらの"義"を与えれば人間などいちころだから＿＿
我輩は鼻高々だった。このまま勢いに任せて勢力を拡大すれば、我々が望む暗黒世界はすぐ実現するであろう。
……だがその楽観ぶりが、運命の歯車を狂わせてしまったのだ。
戦勝祈願の宴の夜だった。我輩酒に酔って、城の最上階から落下してしまったのだ。とはいえ我輩は魔王、それぐらいは日常茶飯事。普段であれば身体の頑丈さを示す武勇伝として、笑い話で済んだであろう。
しかし落下した場所には、一匹の化け物が鎖で繋がれていた。神々との最終決戦を見越して聖霊界から連れてきていた翼竜だ。よりによってあのクソ化け物、嬉しそうに我輩を噛み殺したのだ。
馬鹿だった。『一番凶暴で、イカれた化け物を見つけてこい』そう伝えたのは我輩だったから。正直イカれ過ぎだ、飼い主の顔も覚えていないのだから＿＿
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