魔王復活!

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『ミャァ、ミャァ』  我輩は長兄としてこの世界に誕生した。  見事であろう。黒い毛並みにまあるいマナコ。ぴょんと突き立つ尻尾に華奢な手足…… 『ふぇっ、ネコ?』  あり得なかった、我輩ネコとしてこの世に転生したのだ。  続けて白い毛並みの次兄、トラ模様の末弟と産み落とされていく。ガクガク震えて大きなネコの乳房にしゃぶりついた。察するに我輩の兄弟と母君らしい。 『……ほら、あなたも早く』  それを愕然と見つめる我輩に、母君が言った。痩せこけた貧相な姿だ。トラ模様と白のつぎはぎで、毛並みもよい方ではない。お世辞にも気品の欠片も感じられない。いわゆるノラネコの類いだ。それでもその瞳の奥底に宿る力強さは健在だ。母親という種族だけが持つ強さであろう。 『我輩は魔王であるぞ』  それでも我輩は通達した。どんな小動物に生まれ落ちようと、崇高なる魂だけは譲れない。  その台詞に母君の表情がはっとなる。 『あんた、目が見えるのかい? しかも話まで出来るなんて』  ありえない、そんな表情だ。そう感じるのは当たり前だろう。生まれて間もない乳呑み子が、感情を持って意志疎通する筈もないから。  それこそが他の存在とは違うところ。我輩前世での記憶を持ち、大人顔負けの頭脳を持っている。神々の御告げを訊くのは勿論、ゲスな人間の言葉まで訊き分けるのも可能だ。どうだ畏れ入ったか。
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