第一章・続4

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犯行現場に向かう木葉刑事だが、その里谷刑事の声を聴いて思わずに…。 「フッ」 鼻で笑ってしまうが、その薄く笑う様子は前に顔を戻した里谷刑事にバッチリと見られた。 「あ゛っ、あーーっ、笑ったな゛っ! 待てっ、木葉さんっ」 現場に向かう追おうとした木葉刑事を捕まえようとする里谷刑事だが、聞き込みに行く予定だからと織田刑事が止める。 「里谷っ、さ、さ、聞き込みに回るわよ」 だが、馬力の在る里谷刑事を、オバサンの織田刑事が押さえ切れず。 「八橋っ、八橋ってばっ、里谷と聞き込みに行くよ!」 早く仕事に入りたく頷いた八橋刑事は、木葉を捕まえ様と暴れる里谷刑事を持ち上げて、織田刑事と一緒に連れて行く。 里谷刑事の喚きを聞きながら歩きつつも、まだ薄笑いを浮かべる木葉刑事に、呆れ笑いの飯田刑事が。 「木葉、後は知らないぞ」 と、一言。 さて、現場となるまだ裏庭の芝生には、固まり切らない血が大量に残っていて。 運ばれる直前の被害者の様子をスマホやカメラで写真に撮っていた若者から、警官が画像を押収していた。 その若者は既に捕まっていて、今はパトカーに居ると云う。 「ほれ」 タブレット端末機に移されたデータ画像を見た二人は、真っ先に飯田刑事が。 「酷い、‘メッタ刺し’か」 だが、木葉刑事の眼には、刺された刺創に血液よりドス黒い靄が見えていて。 (強烈な恨みと怒りが漂う…、怨恨の殺しだ) と、思いながらも。 「感情的な勢いの刺し方…。 おそらく、怨恨の線と物取りと両面かな」 その意見を聴く、腰に手を当てる片岡鑑識員が。 「見て解るのか?」 眼を細めて観察するまま問うと。 部屋着のジャージ姿の被害者だが、画像を拡大して傷口を見る木葉刑事は。 「画像から見るに、刺し傷と成った皮膚の痕の一つ一つが、どれも微妙に乱れてます。 刺す前から怒りや憎しみから力み、刺した時も勢い余っていたし。 強引に引き抜くから、傷口が更に乱れた。 でも、・・おそらく犯人は右利きかな。 引き抜く勢いが、向かって右側に…」 木葉刑事の意見を聴いた片岡鑑識員は、ニヤニヤしてタブレット端末機に近付くと。 「木葉、刑事課をお払い箱に成ったら、鑑識課に来い。 超一流の鑑識員に扱いてやる」 片岡班長の話を聴いた飯田刑事は、 「木葉、天下り先が決まったか~」 と、茶化すが。
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