月は見ている。

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今日は互いの仕事も一段落したから久し振りに会うことになったんだよね。で、夜桜デート。 河川敷の桜並木はとても綺麗でみとれてしまう。 桜が咲く季節だけど、夜はまだまだ冷える。 こんな事ならここに来る途中で缶コーヒーでも買っておくべきだったかな。 「こっちにおいで。」 と、ベンチまで歩いていく。 繋がれた手ははなれ、彼は先にベンチに座り何故かぽんぽんと太腿を叩いている。 どうやら、私にそこに座れと促しているらしい。 恥ずかしさのあまり動けないでいると、すかさず手を取られぐっと引き寄せられ問答無用で膝の上に座らされた。 それだけならまだしも、お腹の方に腕を回されギュッと後ろから抱きすくめられる感じになった。 耳元に、 「二人一緒なら寒くないね♪」 うっ。擽ったい…。 「そう、だね…。」 「? どうしたの? この体勢嫌だった?」 「えっと、別に…大丈夫。ただ、ちょっと恥ずかしい、です(照)。」 「ふふ。いつまで経っても恥ずかしがり屋さんだねぇ。もう、付き合って一年だよ? 友人付き合い入れたら八年にもなるのにさ。」 「私は! (そう)みたいに慣れてないもんっ!」 「俺だって慣れてないよ? ただ単に好きな娘にはくっついていたいだけ。充電してるの。俺を癒せるのはハルだけだよ?」 「私はドキドキし過ぎて癒やされない。心臓止まりそう。」 「ふふ。ほんと可愛いね。もっと早くに付き合っとけばよかったなぁ。高校の時に告れば良かった。」 「どうして? でも、高校生の時なら多分私、付き合ってないよ? あの頃は、皆で遊ぶ方が楽しかったし。」 「そっかぁー。だったら今で良かったんだね。……ねぇ、結婚、しよっかぁ。」 「え?! 結婚? 誰が?」 「誰が?って、俺とハルがだよ?(笑)ハハッ。 ハルは俺とはいや?」 「え!! 嫌じゃないよ。全然! でも、なんで私? 蒼だったら私なんかよりもっと良い人と結婚出来るよ?」 お腹に廻された腕に少し力が入る。 「俺はハルが良い。ずっと一緒にいたいし、仕事から帰ってきてハルにおかえりって言われたい。仕事で疲れた時ギュッとして癒やされたい。俺を一生癒して? 俺もハルの事癒やしてあげる。」
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