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授業が終わり、気合を入れて文芸部の部室へと向かう。
今日こそは気になる小説の続きを読んでやる……そう意気込むのには理由があった。その理由とは、同じ文芸部に所属する双子の存在だ。
とにかく明るい印象を受ける姉の佐川朱里(さがわ あかり)と、暗い印象しかない弟の佐川凍夜(さがわ とうや)。この双子は天然で、相手にしていると小説をゆっくり楽しめない。それでいて、常に余計なお節介をしてくる。
明日は用事があるから、今日は静かに小説の続きを読むんだ。そう思いながら部室の扉を開けると、突然クラッカーの音が鳴り響いた。
「隼人っ! お誕生日おめでとう!」
「……おめでとう」
不意を突かれ過ぎて、俺は無言で呆然と立ち尽くす。
「さあ、早く入って!」
手を引かれて部室に入ると、『HAPPY BIRTHDAY』と書かれた垂れ幕や、手作りの飾りが視界に入った。
「俺の為にか?」
「当たり前じゃない」
机の上にはお菓子やジュースが並べられ、真ん中には小さいケーキも置いてある。
「驚いた? それでね、私達からプレゼントもあるんだよ」
弾ける様な可愛らしい笑顔を見せ、朱里はプレゼントの袋を渡してきた。
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