ごめんなさいは魔法の言葉

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……あれ? いつの間にか景色が変わっている。 ここはどこだろう……。辺り一面が真っ白だ。 「なあ、里花は今日、神様に何をお願いするんだ」 ふいにかけられた言葉に、私はまたも心臓が飛びはねそうになる。 「……ごめんなさい。なんの話だっけ?」 「はあ?そんなの俺達が今向かってる所の話に決まってんだろ?初詣だよ。初詣!」 ……思い出した。 これはきっと私と里志くんが高校3年生の頃、一緒に初詣に参拝しに行った時のことだ。 前方に目を向けると、確かに神社らしき場所から長蛇の列が伸びて、たくさんの参拝客で賑わっている。 今日は大晦日。朝から降り続ける雪がこの光景にどこか神秘的なイメージをもたらしてくれる。 「寒い」 思わず口をついた言葉が白い息と共に洩れる。 そんな私を見かねたのか、里志くんは自分の身につけてるマフラーを外すと、私の首にそっと巻いてくれた。 「え?え?いいよいいよ。そんなことしたら里志くんのほうが寒くなっちゃうでしょ?私はいいから里志くんが使って」 だけど、里志くんはそれを断固として受け取らない。 「いいんだよ。寒そうにしてる里花を見てるとこっちまで寒くなるんだよ」 そう言いながらも、里志くんの鼻先は真っ赤になっている。 「ごめんね。ウチ貧乏だから、こんなのも買えなくて」 「そんなのお前が謝る必要はねえよ。だって人間助け合いが大事だろ?」 「うん、本当にごめんね」 「はは、里花謝りすぎ。そこはお礼をいうとこだろ。おっ、ようやく俺達の番だな」 そんなことをしている間にも、参拝する順番がようやく私達のところまで回ってきたようだ。 「それで何をお願いすんの?」 「……内緒」 「ケチ!」 二人で鈴を鳴らして、手を合わせる。 あれ?そういえば、このとき私は何を願ったんだっけ……。
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