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ぼくたちにとって、その日はとっても特別でした。
ほら、朝からなんだかウキウキする日ってありませんか?
そんな日はきっと特別な1日だと、心の奥底で知っているのでしょうね。
今日はそんな特別のできごとです。
「アオネさん、大変なんです!」
ぼくは街を歩くお姉さんをつかまえて尻尾をふりました。
「なんだいシロ、ちょうど仔豚のいちごムースケーキを差し入れしようとしてたんだ」
アオネさんはオカルト雑誌ではたらいているお姉さんで、ぼくのような妖怪が視える人間の希少種です。
「そ、それも大事ですが(ヨダレが)とにかく一緒に来てください!」
取るものも取りあえず、コートの袖を噛んでひっぱりました。
ぼくは野狐のシロ──化け狐の妖かしです。
“あやかし会社”の社員で、まだまだ半人前の妖かしなのです。
人間をおどろかせたり、恐がらせたりするのが仕事です。
すごく昔から、妖怪は自然とともに生きてきました。
それはそれは遙かな昔からだと伝わっています。
会社の地下倉庫までアオネさんをひっぱってくると、やっと心の準備ができたので尻尾を垂らしました。
「なんだい、こんな所までつれてきてさ?」
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