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「今日は特別な日で、その当番にぼくが選ばれたのです」
いちごムースのにおいをクンクンかぎながら、ぼくはウロウロとせわしなく歩き回るのです。
「ちょっとおちつけ。たしかに今日は心がソワソワするけどさ。なにかあるのかい?」
「もうすぐですから」
ぼくはその瞬間をまちました。
やがて──
「足洗えぇぇぇ」
いきなり床をつきやぶって、巨大な足がにょきりと現れたのです!
それはごつごつとしてとても汚い足でした。
苔むしてタマゴの腐ったにおいがしますが、荘厳で古びて神々しく見えるから不思議です。
胸の奥底にある熱いマグマを刺激するような、心にふく風の薫りを胸いっぱいに吸いこんだみたいな、そんな魂に沁みいる懐かしい想いがこんこんと沸きあがりました。
きっと人間は、このようなものを「神さび」と呼んだのでしょうね。
「きましたよアオネさん、一緒に洗いましょう」
「これって本所七不思議の足洗邸(あしあらいやしき)じゃないか。ってか、あたしも洗うのかい!?」
「きっと良いことがありますから」
アオネさんが眼をパチクリしながらも、ぼくと一緒に巨大な足の隅から隅まで丁寧に洗ったのです。
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