アノ日当日

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「姫、呼んだやろ?来たったで?なぁ、泣かんといてや~俺まで悲しなるやんか」 ああ、空耳が聞こえる。 胸が締めつけられる…。 俺は俯いて床に落ちる涙を見つめていた。 「お~い、姫ぇ?俺やで?俺俺!」 俺俺詐欺なら間に合ってるしシャレにならない。 やっぱり四代目ってふざけた人じゃん。 声までそのまま似せるなんて…え? 俺は思いきり顔をあげて狐面を見つめた。 「…香椎?」 有り得ない。 有り得るはずがないその名前を呼んでしまった。 どうせ期待しても砕かれるだけだ。 そう思っても狐面で隠された顔から、 フードで隠された髪から、 俺に向けられる優しさが確かに似ているのだ。 何より俺の手を包んでいる手に覚えがあった。 「香椎?」 さっきより大きめに尋ねてみた。 「ん?せやで~、やっと気付いてくれたん?」 楽しそうに狐面の奥の口が弧を描いていた。 周りの参列者達も義人さんも俺と香椎の空気に驚いたのか、ただジッと見ていた。 「香椎、四代目は?四代目どこ?」 俺の疑問に香椎はわかりやすく笑い出した。 「堪忍堪忍、俺がいわゆる四代目やねん。親父にはならへん言うてるけどなっ!」 「え?」 「とりあえず面倒ごとは嫌いやし、今から姫、攫うで?」 「え?さら…うわぁっ!!」
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