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落ちなかった。
落ちそうになったけど誰かの手が私を止めてくれてる。
その手は温かく冷たい。
「何してんの?」
聞き覚えのある子が私の手を繋いでいた。手汗で滑りそうだった。
しかしもう一人の女の子が私の手首を勢いよく引っ張る。
私はその子も知っている。
聞き覚えのある子が言わないでって言ってた子だ。
その子に両脇を掴まれて柵の中に戻された。
「やっぱりこうなったか」
聞き覚えのある子がその場で泣いた。近くにパンがあちらこちらに落ちている。売店で買ったものだろうか。
私はその子に言った。
「ごめんね、死ねなかった」
「……当たり前よ」
彼女は私を手のひらで叩いた。
その直後にもう一人の子が彼女を叩いた。
頬が熱い。彼女もか。
あれ、なんで目から雫が……。それに体も震えている。
「二人共に言う。死んだら会えないのよ?」
聞き覚えのある子じゃない子はそう言った。
「有上さん、この子も謝るの下手なの。でも誰だってごめんなさいは言いづらいよね。でもこの子の言動は最悪だった。いじめがね。それでも伝えたかった言葉があるの。ね、百合川(ゆりかわ)さん」
百合川さんは静かに頷きこう言う。
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