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愛は変化する。
それは否定できない気がした。
私の両親も、愛が芽生えて結ばれたはずなのに別れてしまったのだから。
「でもさすが繍さん。名推理!」
「いや、今回は奇跡的な展開があったおかげだよ。そう何度も起こるわけがないからね、奇跡なんてやつは」
「そうかな……」
だって私、繍さんからいっぱい奇跡をもらってるような気がする。出逢えたことも、助けてもらったことも。
それに繍さんと一緒に何度か事件に遭遇もしていて。これも奇跡だと私は思う。
「あ、タイトルは【アイドル王子監禁未遂事件】でいいよね?」
「タイトル?」
「私、繍さんが解決した事件の記録係ですから」
「記録……って?」
「『探偵Sの事件簿』のです!」
今はまだ記録係だけど。
本当は私、名探偵の助手になりたい。
ーーー なんて。思うだけでも自由だよね。
「蒼衣(あおい)ちゃん……
今更だけど、今日学校は?」
「春休みですよ」
「………そっか、そんな時期か。でもね、蒼衣ちゃん」
向かいのソファーで、繍さんはいつも以上に優しい微笑を浮かべながら言った。
「君は最近、僕が関わる事件に首を突っ込みたがるから心配だって、英紫(えいし)が言ってたよ」
「お兄ちゃんが?」
「大切な妹が心配で目が離せないんだろ。首輪で繋いでおきたいくらいだって」
「ひっど。なにそれー!まるで犬扱いじゃない。誰が毎日ご飯作って、洗濯や掃除やってあげてると思ってるのかしら!」
「あまり僕と仲良くしていると英紫に怒られるだろ?」
「いいえ、お兄ちゃんは怒りません。怒れないんです。なぜだと思います?」
「もしかして、英紫の弱みを握ってる?」
「ふふ。いろいろと。妹ですから弱みの一つや二つ、当たり前です。
でも私がここへ来ることはお兄ちゃんの希望でもあるんですよ」
名探偵の顔に、たくさんの疑問符が浮かんでるように見えた。
「お兄ちゃん今日から事件の捜査で1週間帰れなくなって。で、昨日「なるべく繍さんと一緒にいなさい」って言われました。
私を1人にさせておくの心配みたいなんですよね。なので、お世話になる代わりにしばらく私がご飯とか作りますね」
唖然とする名探偵を前に、私はなんだか得した気分になった。
「ーーーまったく、英紫のやつめ……」
ボソッと言って、ポーカーフェイスだった繍さんの表情が一瞬崩れたその顔に、私はドキドキした。
繍さんのこういう顔、意外と可愛ノダ。
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