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「5歳のお誕生日、おめでとう、ミヤ」
そう言ってリビングでママがオレンジ色のリボンを着けたクマのぬいぐるみを手渡してくれた。
クリーム色のふわふわでもふもふなクマさんは私の体と同じ位の大きさ。
小さな私の両腕一杯に抱かれ、むぎゅっ!と押し潰される。
「ありがとう!ママ!」
「はい、ママこそ、ありがとうミヤ。
今日は早くお迎えに行くからね、保育園で待っててね」
「うん!まぁるいケーキ、買ってきて!
いつものイチゴとかブドウとかいっぱいのってるの!みーんなで食べるの!」
「はい、判りました~!」
誕生日の朝、私は前々から約束していたバースディケーキをママにねだり、夜には家族3人で食べられるのだと喜び、はしゃいでいた。
私の笑顔にママもおどけて笑顔だった。
大好きなママ。
優しくて、暖かくて、いつもお花の柔らかい匂いのする大好きなママ。
その日の夕方、私のためにケーキを受け取りに行き、保育園にお迎えに来る途中で事故に遭い……死んじゃった。
車を運転していた人の操作ミス……歩道に向かって突っ込んできた車に、自転車で走行中のママは巻き込まれた。
即死だったって……
ケーキと同じになってたって……
以来、私はそのケーキを見るのが嫌。
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