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電気も点けず、分厚いカーテンを閉めた暗い部屋で、ベッドの中でクマさんを抱き締めて縮こまっていた。
私の部屋の物はママが揃えてくれた物ばかり。
新しいママには触らせないでいた。
部屋にも入らせないでいた。
入っていいのはママとパパだけ。
あの日、ママが死んじゃった日、イチゴやブドウのたくさん乗ったケーキは警察の人が透明な袋に入れてパパに手渡した。
グチャグチャになっていたのに、「誕生日ケーキだと思われるので……」とゴミとして捨てるのを躊躇われると渡された。
パパの隣でクマさんを抱いた私はそれを眺めてパパの服の裾を握り締めていた。
ケーキなんかおねだりしたから……
こんな物、買いに行かなければママは死ななかった……
パパは何も言わず袋に入った潰れた箱をさらに握り潰して胸に抱え、顔を伏せて声を押し殺して踞った。
あの日の事が頭から離れないのは私だけなのかな?
もうパパは忘れちゃったのかな?
ママより新しいママの方がいいのかな?
ママの選んでくれたオレンジ色の布団にくるまって、私は泣いた。
「ねえ、クマさん……何故ママはいないの?」
私の誕生日なのに……
一人ぼっちの部屋で何度も口にした。
暗いベッドの上で、布団の中で何度も思い出した。
誰にも聞こえないように、誰からも答え返して貰えないのに、声に出さずにはいられない日。
この日が、嫌い。
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