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コンコン、って軽く部屋の扉を叩く音で目が覚めた。
うとうとと眠っていたみたい。
パパが帰って来たんだって判った。
新しいママから私の事を聞いて、やって来たんだって判ったけど、寝たフリして聞こえないフリをした。
「ミヤ?──ミヤ、ごめんな」
パパが足音も発てずにベッドに近付き声を掛けてくる。
布団の中に頭まで隠れてその声を聞く。
落ち着いた……優しい、悲しそうな声。
布団からはみ出した髪を大きな手で撫で、指で掬う。
ママが死んじゃってから私が眠るまでいつも必ずしてくれた。
「ミヤ、ミヤの誕生日はねママの、ミヤのママの大切な日なんだ。
ミヤが産まれた日、ママは凄く幸せで、凄く喜んで『ありがとう』って泣いていたんだ。
パパも赤ちゃんを抱くママを見てとても嬉しかった……ママと同じように、産まれて来てくれてありがとうって思ったんだよ」
パパは私が寝ていると思って話をしているのだろうか?
初めて聞く話……身動きもしない私に静かに語り掛けてくる。
「ミヤの誕生日に大好きなママは居なくなった……それが悲しくて、辛くて、でもミヤの産まれた日を大切にしていたママのようにお祝いしてあげたかった……ミヤが嫌がっているようだったし、パパは仕事で遅くなるし、ミヤを一人にさせていた……ごめんよ」
パパが繰り返し謝ってくる。
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