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新しいママは毎日ママの写真に手を合わせ、毎日綺麗な花を飾ってくれている。
私の好きな食べ物を作ってくれて、私に「いってらっしゃい」と「おかえり」を言ってくれる。
ママがいた時と同じように、ママと同じように、優しくにっこり笑ってくれる。
ママのくれたクマさんが寂しくないように、小さめのクマのぬいぐるみを買ってくれた。
ブルーのリボンの付いたぬいぐるみは私の机の上にぽつんと置いてある。
ママの写真の隣で寂しそうに座っているクマを、写真の中のママは少し困った顔をして見詰めている。
「ミヤ、誕生日が嫌いだなんて言わないで……ミヤの誕生日はママの大切な日なんだから。
パパの大切な日なんだからね?」
そう言ってパパは布団の上から私の頭を撫でて、また静かに部屋から出ていった。
カチリとゆっくりと閉まった扉の音を聞いて、私は布団を被ったまましゃっくりをあげて涙を拭いた。
「ごめんなさいパパ……ごめんなさい、ママ」
忘れたくないの。
私のせいでママが死んじゃった……ケーキなんかおねだりするんじゃなかった……
誰もそんな事言わないけど、誰も責めたりなんかしないけど、そう思っていなくちゃ私はママを忘れてしまいそうになる。
それくらい、パパも新しいママも優しい。
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