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夜10時。
そこにはまだ灯りがあった。
「ちょっと開けなさい、開けろっ!」
私は施錠されたガラス扉をドンドン叩いた。
「何だ、今日はもう終わり……
!
何してる、早く入れ」
迷惑そうに扉を開けた男の獣医は、
『どっちや!』と突っ込む隙すら与えずに、私から子犬をひったくった。
手術するんだろうか。
「わ、私も何か…」
慌てる私に、彼はビシッと言い切った。
「貴様に出来ることは何もない。その汚ないコートを脱いで、念仏でも唱えておけ」
ムッとしたが仕方ない。
言われたとおり、私は手を合わせてナンマンダブと唱えていた。
__数時間経過__
「どうなの、助かりそう?」
「あたり前だ、俺を誰だと思ってる…フウ」
知らん。
変な顔をした私の隣に、彼はゆっくり腰かけた。
「危機的状況は脱したよ、処置が速かったからな。にしてもあんた…」
彼はもう一度、マジマジと私を見た。
「ハハハ、ひでえ格好」
ムムッ。
あれ、でも…笑うと結構イイオトコ。
私はちょっぴり嬉しくなった。
「脱いどけって言っただろ。感染症とか怖いからな」
忘れてた。私は慌ててコートを脱いだ。
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