今日から30歳。

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 夜10時。  そこにはまだ灯りがあった。 「ちょっと開けなさい、開けろっ!」  私は施錠されたガラス扉をドンドン叩いた。 「何だ、今日はもう終わり…… ! 何してる、早く入れ」  迷惑そうに扉を開けた男の獣医は、  『どっちや!』と突っ込む隙すら与えずに、私から子犬をひったくった。  手術するんだろうか。 「わ、私も何か…」  慌てる私に、彼はビシッと言い切った。 「貴様に出来ることは何もない。その汚ないコートを脱いで、念仏でも唱えておけ」  ムッとしたが仕方ない。  言われたとおり、私は手を合わせてナンマンダブと唱えていた。  __数時間経過__ 「どうなの、助かりそう?」 「あたり前だ、俺を誰だと思ってる…フウ」  知らん。  変な顔をした私の隣に、彼はゆっくり腰かけた。 「危機的状況は脱したよ、処置が速かったからな。にしてもあんた…」  彼はもう一度、マジマジと私を見た。 「ハハハ、ひでえ格好」  ムムッ。  あれ、でも…笑うと結構イイオトコ。  私はちょっぴり嬉しくなった。 「脱いどけって言っただろ。感染症とか怖いからな」  忘れてた。私は慌ててコートを脱いだ。 
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