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砂羽(サワ)は小学二年生になった娘 紗英(サエ)の、出掛けて行く小さな背中を見送っていた。
今日、紗英は生まれて初めて友達のお誕生会に招待されたのだ。
日曜日に嬉しそうに友達へのプレゼントを選んでいた紗英の顔を思い浮かべ、砂羽はそっとため息を吐く。
大人になり母となった今では笑い話となった、ほろ苦い思い出が甦ったのだ。
あれは砂羽が紗英と同じ小学二年生の時だった。
初めて行った友達のお誕生会。
前日に母と買った友達の好きなキャラクターのピンクのコップをプレゼントに持って、ワクワクしながら出掛けた。
パンと鳴るクラッカーから飛び出す、カラフルな紙テープ。
「ちーちゃんお誕生日おめでとう」
テーブルに並んだフライドチキンやイチゴの沢山乗ったケーキを囲み、仲の良い友達四人で、ちーちゃんのお誕生日をお祝いした。
学校で会う時とは違う雰囲気に、皆少しばかり興奮していた。
その時だった。
「知里、皆のプレゼント、開けてみたら?」
ちーちゃんのママがニコニコしながら言った。
「うん。皆、見ても良い?」
瞳をキラキラさせて聞くちーちゃんに、頷いて返事をした。
不器用な小さな手で開けられていく色とりどりの包装紙達。
中から当時人気だったキャラクターのハンカチや鉛筆等の文房具が出てくる。
そして最後にちーちゃんが手に取ったプレゼントが砂羽の持って行った物だった。
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