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可愛らしいピンクのドット柄の紙袋を巾着型に口を絞り、白いリボンで結んであるそれを開けたちーちゃんの顔が綻ぶ。
「わぁー、プリンセスのコップだぁ」
ちーちゃんの大好きなお姫様のキャラクターの描かれたコップ。
喜ぶ顔に得意満面になった砂羽。
「あれ? 未だ入ってる!」
ちーちゃんが取り出したのは、コップとお揃いのピンクの歯ブラシ。
「あら、流石に砂羽ちゃんのお母さん、歯医者さんだけあるわね」
ちーちゃんのママがニッコリと笑って言った。
そんなママにちーちゃんが白い封筒を渡す。
「これ、ママに渡してって書いてある」
ちーちゃんのママが封筒を開けると、出てきたのは1枚のハガキだった。
『お誕生日おめでとうございます。
お誕生祝いに、無料歯科検診をさせて頂きます。
ご都合のよろしいお時間にお立ち寄り下さいませ。
大塚歯科医院 大塚紗己』
ちーちゃんのママは笑っていたが、ちーちゃんの表情が嫌そうに歪んだ事を砂羽は見逃さなかった。
それ以来、お誕生会に招待される度に母 紗己のハガキに、友達の顔が歪むのを見る事になった。
小さな砂羽にとってはとても悲しい事だった。
そして砂羽はお誕生会がキライになった。
『紗英、お母さんはお誕生会が大嫌いだったんだよ。
でも紗英は大好きになれると良いね』
心の中で小さくなった娘の背中に話し掛けて家に入った砂羽だった。
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