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時々、粉洗剤を足しながら洗っていく。
たらいの水は靴が綺麗になるに連れて、どんどん汚なくなって、粉洗剤の泡と混ざりあっていく。
「ママ~、これとって」
幼稚園児ズの1人、綺羅(きら)が私を呼んだ。
二人が遊んでいたボールが、庭に植えてあった木と木の間に挟まってとれないようだ。
「今、いくわ」
手を石鹸で洗い、エプロンで手を拭くと、綺羅の方に行き、挟まっていたボールをとって、綺羅に渡す。
綺羅は嬉しそうに笑って、
「ありがとう、ママ」
と言った。
長い髪が風のせいで、顔にかかるので、何度も
指ではらっている。
「綺羅、髪の毛縛る?」
「うん、お願い」
手ぐしで綺羅の髪を整えて、編み込みをしてエプロンのポケットに入っていた髪用輪ゴムでしばってあげた。
「綺羅、いいわよ」
そう言うか言わないかのうちに綺羅は、
「頼人(らいと)、続きやるよー」
と言って頼人を探す。
すぐに見つかる距離にいた頼人を見て、私も綺羅も驚いた。
頼人がしていたのは……。
先程、私が上靴を洗っていたたらいに両手を突っ込んでいた……。
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