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次の日、手がかりを求めて村で唯一の家具職人を訪ねる事になった。
しかし、そこで待っていた答えはまたもルーイを落胆させるものだった。
職人が言うにはなにも特別なものではなく、この地方ではありきたりなものであるし、工房にも同様な椅子や棚が並んでいた。
望みは全て断たれ、手がかりはこれ以上何もなかった。
ルーイは椅子壊し職人としてこれ以上残念なことは今までこれからもないだろうと、悔しさに涙をにじませた。
「すまねエなビックスロー。おメエの望みをかなえてやる事は出来なかった。
椅子壊し職人としてこの椅子にやり直す機会を与えてやれなかった…」
ビックスローはその言葉を聞いて静かに首を振った。
「そんなことはねえだよ。椅子は元に戻らねかったども、オラを村につれて帰ってくれただよ。オメ様に言われなければオラ村に帰る事もながったし、まあまに会う事もながった。椅子壊し職人は、椅子にはやり直す機会を与えられなかったども、オラにはやり直す機会をくれただよ。」
二人はこれで気が抜けてしまったのか工房の前に並んでいる椅子にへなへなと腰を下ろした。その途端、村の家具職人から怒号が飛んできた。
「なんてことをするだ二!お前達は!」
二人はなぜ怒鳴られたのか全く分からず、ぽかんとしていた。
「テーブルに腰掛けるなんて失礼にも程があるだ二よ!
この罰当たりどもが!」
ルーイもそしてビックスローもずっと椅子だと思っていたのは小さな村人のために作られたテーブルだったのだ。
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